ロック音楽の多様化(1970年代)

ロック音楽の死

始まりはローリング・ストーンズのメンバーであったブライアン・ジョーンズが自宅プールで溺死体として発見されたことでした。

そして、70年になるとジミ・ヘンドリックスが自分の嘔吐物をのどに詰まらせ窒息死、ブルース・ロックの女王ジャニス・ジョップリンが滞在中のホテルで心臓麻痺により死亡、ドアーズのジム・モリソンも麻薬中毒により死亡、というように時を同じくして立て続けに4人のカリスマ・ミュージシャンが亡くなってしまいます。

この4人に共通することは、死因に麻薬が絡んでいたことであり、この頃からロック音楽と麻薬というのが大きくクローズ・アップされていくことになります。また、この4人の死は "ロックは死んだ" とまで言わせるほど大きな事件として語られ、ロック音楽文化の一つの分岐点となります。


多様化するロック音楽

50年代にはエルヴィス・プレスリー、60年代にはビートルズというスーパースターが現れました。しかし、人々の価値観が多様化した1970年代においてはそのようなスターは登場しませんでした。

70年代になると、多様化したロック音楽はさまざまなジャンルに分かれていきました。ロック音楽はロックンロールという一つの流れからカントリー・ロック、サザン・ロック、ハード・ロック、ヘビィ・メタル、プログレッシヴ・ロック、グラム・ロック、クロスオーバー(別名:AOR)、ジャス・ロックへと分化してきます。

そのような中、70年代初期にはカーペンターズとエルトン・ジョンがビック・ヒットを飛ばします。彼らが時代を代表するスーパー・スターになったのはそのレコード・セールスの多さからでした。それらもたらしたものは、"レコード・セールのあるアルバムがいいアルバム" というロック音楽のクオリティに対する価値基準でした。


よりハードなロック音楽の時代へ

60年代末期から、エレキ・ギターやスピーカー・システムの発達により、ロック音楽は大音量の時代へと移行していきます。ハード・ロック時代の到来です。

ハード・ロックの時代になると、楽器は伴奏としてだけではなく、歌と同様の比重を占めるようになります。またサウンド的には、破壊的なディストーション・サウンドを特徴とする攻撃的なイメージの曲が増えていきます。これらはクリーム、ザ・フー、キンクスによって提唱され、ロック音楽の新しいスタイルとしてリスナーたちの支持を得るようになりました。

その流れは、ブルースを基調にし、独自の路線を築いたレッド・ツェッペリン、 クラシックを基調に、様式美を重視したディープ・パープル、この2大ハード・ロック・バンドによってこのハード・ロックは確立されることとなります。

またこの時代には、"3大ロック・ギタリスト"と言われたエリック・クラプトン、ジミ-・ペイジ、ジェフ・ベックが登場します。彼らの演奏スタイルはその後のギタリストたちに多大な影響を与えました。そういう意味では、この時代はまさにエレクトリック・ギターの時代だったと言えます。

このようなハード・ロックの流れは70年代中期、クイーンに代表される音楽的な形式美を重んじるスタイルと、キッスに代表される悪魔的なメイクや衣装などを特徴とするパフォーマンスを前面に押し出すスタイルとに分かれていきます。

前者に属するロック・アーティストたちは、天使をモチーフにした衣装や雰囲気をかもし出していました。袖にヒラヒラのついた広げると羽のようになる衣装やきれいなメイクなど、ビジュアル面において中性的なイメージを前面に出していたのが特徴です。

それに対抗するように、この後者であるパフォーマンスを前面に押し出すスタイルは、ダークなイメージをかもし出していきます。前者が天使なら、後者は悪魔、というわけです。このようなスタイルは、よりヘビーなサウンドへと移行していった"ヘビィ・メタル"のアーティストたちに好まれ、継承されていくことになります。


よりテクニカルなロックへ

ハードなロックが荒々しさを前面に出す一方、ギターよりもキーボード(シンセサイザー)を中心とした音作りを行ない、クラッシックやジャズの要素を多く取り入れ、非常にテクニカルな演奏をすることを重要視したロックも出てきました。プログレッシヴ・ロックの台頭です。

それらの特徴としては、今までの3分という一曲の長ささえ無視するばかりでなく、ラジオなどの商業ベースさえも無視した20~30分といった曲の作成などがあります。これは、ポップスを芸術作品にすることを目的としたアプローチの一つとして行われていたといわれています。

代表的なアーティストとしては、E・レイク&パーマー、キング・クリムゾン、ピンク・フロイドなどがあげられます。中でもピンク・フロイドはとくに徹底しており、そのライブにおいてさえも一つの映画であるかのような雰囲気をもたせたり、といった徹底的に芸術性といったものにこだわりを見せていました。


都会的なデカダンス

美的なハード・ロックの一派生として、中性的な化粧や衣装をまとったデカダンスと都会的なセンスを取り入れたロック音楽が新しい波としてポップ・シーンに出てきます。グラム・ロックです。

デヴィッド・ボウイの中世的な魅力は、英国の人気投票で女性歌手部門に投票されるなど "ロックを歌うときにはメイクを" という流れを作りました。そして、この流れはこの後に現れるMTVという映像の時代に大きく関わってくることになります。

そして、のちにやってくるMTVの時代では、"ルックス" がいいという事は大きなアピール・ポイントになり、CDが売れるための要素として非常に重要性を持ってくることとなります。


クロスオーバーされ、より洗練されたロック

70年代中期になると、ロック音楽業界はよりいっそう混沌としてきます。そのような中、さまざまな音楽の要素を取り入れたロックが登場してきます。クロスオーバー・ミュージックです。

別名AOR(アダルト・コンテンポラリー・ミュージック)とも呼ばれたクロスオーバーは、今までのハードな路線から一歩下がった落ち着いた雰囲気や音作りで"大人向け"の音楽という位置づけがなされます。これは、ロックを聞いていた世代が20代、30代へとなっていったこと、彼ら自体がもっと落ち着いた音楽を楽しみたくなってきたことが影響しており、ロック音楽そのものがあらゆるジャンルの音楽を取り入れ、より成長していった証でもありました。

ジャズと融合したジャズ・ロックからはマイルス・デイヴィス、伝統的なティン・パン・アレイ音楽の要素を取り入れたシンガー・アンド・ソングライターのビリー・ジョエル、ロックとソウルを結合したドゥービー・ブラザーズ、フォークやカントリーと融合させたイーグルスやリンダ・ロンシュタット、アダルトなソウルのボズ・スキャッグス。こういったアーティストによりさまざまな実験的なアプローチがなされ、ロック音楽はより洗練されたものになっていきました。


ビジネスとしてのロック音楽

60年代から70年代の始めまでは、100万枚売り上げるグループはビートルズなどの限られたアーティストたちだけでした。しかし、70年代後半になると100万枚以上の売り上げを誇るアルバムが続出し、ロック音楽はビジネスとしてその頂点の時代を迎えることとなります。

ロック音楽そのものがビジネスとなったことにより、ロック音楽はそのスタイルだけでなく、音楽そのものにも大きな変化が起こってきました。映画とのタイ・アップです。

映画「サタデー・ナイト・フィーバー」の大ヒットにより、ディスコ・ブームが訪れると、ロック音楽自体8ビートからよりファンキーな16ビートへと変化していきます。そして、このビートの変化という流れはディスコ・ミュージックという新しい流れを生み出していくとともに、直線的なビートのロックにグルーブ感を持たせることとなります。

このディスコ・ミュージックからは、ビージーズ、アバといった2大スターを生みました。ただ、このジャンル自体が映画と絡み合って生まれてきたという事情があり、まさにビジネスとしてのロック音楽の象徴しているといえるでしょう。


幻想としてのロック音楽の復活とパンク・ロック

70年代になると、アーティストたちはその社会的地位も高まったことも手伝って、政治や社会へ積極的に関わるようになってきます。そして、その発言はティーン・エイジャーを中心に社会に大きな影響を与えるようになっていくのです。

ロック音楽が社会的にも影響を与えることが分かってくると、70年代後半にかけて攻撃性や不良性・反社会性を唱える新しい波が出てきます。パンク・ロックです。

それらはアナ-キズム(無政府主義)や、反社会を前面に押し出したり、ファッションにおいてもスキンヘッドや髪を逆立てたりといった内面的にも外面的にも攻撃性というものを強調しました。その一方で、ピンを体に刺したりといった自虐的な傾向があったのも特徴的でした。

その過激なムーブメントは1977年のセックス・ピストルズの登場において頂点へと上り詰めていきます。そして、その流れを受けたザ・クラッシュ、ザ・ジャム、ブロンディといったアーティストが後に続き、パンク・ロックは一気にその時代を圧巻していきます。

そんな中、パンク・ロックの象徴でもあったセックス・ピストルズのシド・ビシャスが恋人のナンシーを殺害してしまいます。その結果、彼も自殺してしまうのですが、この事件はパンク・ロッカーばかりでなく、その支持者にも大きな衝撃を与えました。

そして、この事件を機に、一大ブームとなったパンク・ロックの幻想は一気に終息していくことになります。

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