妖しいポップ・スター
デビッド・ボウイはロックの世界に化粧というものをもたらしました。グラム・ロックはどちらかというファッションであり、音楽的な特徴は余りありません。派手な舞台衣装や大掛かりな舞台装置などを特徴としており、デビッド・ボウイも代表作「ジギー・スターダスト」で演劇風のショーを披露しています。
音楽においては色んなジャンルを渡り歩き、そのそれぞれで卓越した作品を残しています。また、その容姿とは裏腹に楽曲的には政治的な哲学的な内容が多く、意外と硬派な所も見せています。
これは音楽とは関係ないのですが、彼は役者としても活躍しており、映画『地球に落ちてきた男 The Man Who Fell To Earth』や演劇『エレファント・マン』などで素晴らしい演技を見せています。1983年には大島渚監督の『戦場のメリークリスマス Merry Christmas, Mr. Lawrence』に英軍将校ジャック・セリアズ役で出演しています。
このように、多彩な才能をもつ彼は雑誌NMEのアンケートでは「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」に選ばれていますが、まあこれだけ才能があるのですら当然だなと思います。
アーティスト
ヒストリー
時代と寝た男
デヴィッド・ボウイは1947年1月8日、イギリスのロンドン南部ブリクストンに生まれました。本名はデヴィッド・ロバート・ジョーンズ(David Robert Jones)。音楽活動を開始してしばらくはヒットに恵まれせんでしたが、1969年、アポロ11号の月面着陸や前年の映画「2001年宇宙の旅」の公開などで宇宙への関心が高まる中、シングル「スペース・オディティ」が全英チャートの5位まで上がり、初の大ヒットとなります。もともと世の中の動きに敏感であった彼らしいといえるタイムリーさだったといえます。
火星から来た男
その後、1970年代前半には、ロバート・アイスン・ハイラインの「異星の客」をモチーフにしたアルバム『ジギー・スターダスト』を発表し、グラムロックの中心的人物として君臨します。このアルバム後のツアーで演劇的な要素を取り入れたステージを展開し、新しいショーのスタイルを提唱しました。
パフォーマーとしての絶頂期
その後も常に新しい試みを続け、話題の中心にいた彼ですが、1975年にはジョン・レノンとの共作シングル「フェイム」でとうとう全米チャート1位を初めて獲得します。この頃がパフォーマーとしての彼の絶頂期であったといえます。
ベルリン三部作
その後のボウイはショー・ビジネスにおけるパフォーマーとしての自分に対して心理的に距離を持つようになり、アメリカを離れベルリンでひっそりと音楽作成を始めます。その頃プロデューサーにブライアン・イーノを迎えて製作したのが『ロウ』『ヒーローズ』『ロジャー』のベルリン三部作です。これらの作品群はアート・ロックとも言われ、ニュー・ミュージック系のアーティストたちにかなりの影響を与えることとなりました。
妖しいポップ・スター
80年代になると、ポップ・アルバム『レッツ・ダンス』を発表します。これには昔からのファンは驚き、はんれていくものもいました。その一方独特のポップ・センスにより、アルバム自体は大ヒットします。このアルバムでデビット・ボウイはファン層をさらに拡大しましたが、音楽に対する熱は逆にさめてしまうことになります。
ボウイのご乱心と覚醒
80年代も終わる頃、デビット・ボウイはまた新たな変化を見せます。それはティン・マシーンというバンドでした。このバンドはノイジーでソリッドなロックンロール・バンドだったのです。「俺はもうここからどこにも行かないぜ」とその当時、彼は言っていましたが、わずか3年でアート・ロックへと戻ることになりました。
その後、2003年には『リアリティ』を発表し、ワールド・ツアーも行うなど、健在振りを発揮しています。
代表的なアルバム
レッツ・ダンス [Let's Dance]
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「レッツ・ダンス」「チャイナ・ガール」といったヒット曲をフューチャーした大ヒット・アルバム。タイトルはレッツ・ダンスですが、実際はあまり踊れません。一応ダンス・ポップなのですが、デビット・ボウイとダンスというのが無理なのかも。どうしてもリズムがフェイクしてしまうんですよね。
ただ、このアルバムのヒットによってデビット・ボウイを知った人も多いと思います。その人たちにとっては昔のアルバムは違和感あるかもしれませんね。まあ、これはこれでボウイの一面だと思えばOKかな、という気もします。曲自体はクオリティも高いですし、いいアルバムであるのは間違いないですから。
ジギー・スターダスト [The Rise And Fall Of Ziggy Stardust]
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自らが異星からやってきた架空のスーパースター「ジギー」となり、ロック・スターとしての成功からその没落までを描く1972年の作品で、デビット・ボウイの人気を決定づけました。
このアルバムは一つのストーリーで展開していきます。まず世界があと5年で終わる(「5年間」)というところから物語は始まります。神は人々を救うため、救世主ジギーを創ろうとします(「魂の愛」)。宇宙人ジギーが登場し(「月世界の白昼夢」)、ジギーは神からのメッセージを人々に告げます(「スターマン」)。弱き生き物を哀れみ(「レディ・スターダスト」)、彼らの救済のためスターになることを望みます(「スター」)。スターダムにのし上がったジギーはエゴを剥き出しにし(「君の意志のままに」)、ファンから見捨てられ、恨まれるようになります(「屈折する星くず」)。傲慢であるばかりか、自分を神と呼ばせようとしたジギーに対し人々の怒りは頂点に達します。そして最後は自らを抹殺するという形で物語は終わりを告げます(「ロックン・ロールの自殺者」)。
この作品のジギーのモチーフとなったのは、ヒッピーたちのバイブルともなったSF界の大御所ロバート・A・ハインライン著「異性の客」の主人公 "火星から来た男(=ヴァレンタイン・マイケル・スミス)" に違いないでしょう。デビット・ボウイがこの作品のライブを行うとき、"スパイダース・フロム・マース(=火星)" という名のバック・バンドを率いていたことからも間違いないと思います。このハインライン著「異性の客」のなかでも、主人公である彼は火星から地球に連れてこられ、数奇な人生を歩むことになるのです... 結末に興味のある方は「異性の客」を読んでみてください。
ハンキー・ドリー [Hunky Dory]
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1971年発表の本作は、アメリカに渡り、アンディ・ウォーホルやルー・リードと親交を深めたことがたぶんに影響を与えた作品となっています。基本的に内省的な歌詞なのですが、この時期に子供が生まれたことも相まって、全体的な雰囲気は結構明るいといった不思議な雰囲気をもった作品です。
この作品のなかでは、アンディ・ウォーフォールとボブ・ディランがそれぞれ曲のタイトルになっていますが、この時期かなりアメリカナイズされていたんでしょうね。そう言えば、ティン・マシーンを結成したときもそうでしたが、意外と思い込みの激しい性格みたいで、簡単に色んな文化に染まる傾向があるようです。まあ、それだからこそ色んなジャンルを渡り歩きながらも、その都度いい作品を出せたのかもしれませんね。
『ジギー・スターダスト』と同時期に製作されたといわれているだけあって、「火星での生活」という曲もあります。彼はかなりハインラインの「異星の客」に傾倒していたというのが良く分かります。
注) ちなみに、この「異星の客」という小説はその時代のピッピーたちを中心としたティーン・エイジャーたちにバイブルのように扱われていたようです。後にビリー・ジョエルものなかの「ハートにファイア」という曲でこの小説のことを取り上げています。
名曲「チェインズ」といい、全体的にオールディーズのようなポップなつくりの本作は今聞いても聴きやすい作品といえるでしょう。





