ケイト・ブッシュ [Kate Bush]

テンションの高い鋭利な刃物

透明感のある高音が印象的なケイト・ブッシュの歌声。「恋のから騒ぎ」のテーマ・ソングになっていることから彼女のことを知った人も多いともいます。ピンク・フロイドのデイブ・ギルモアに見出されたその才能は、テンションの高い鋭利な刃物のような感性の曲で聞くものを圧倒します。

19歳でデビューしたとき、その容姿の美しさからどちらかと言うとアイドルのように扱われました。日本でもいきなりブレイクし、TVのCMで「ローリング・ザ・ボウル」が使われたりもしました。

もともとエキセントリックなところがあったケイト・ブッシュ。一時期精神的に波状をきたしたこともあったとも言われていますが、出産を機にこれまでにないほど柔らかな雰囲気の作品を発表したことからも、精神的にも安定してきているのかもしれません。ただ、作品の質としては張り詰めた緊張感のあった80年代中盤までが最も輝いていました。

アーティスト

ケイト・ブッシュ(1958年7月30日、英国ベクスリーヒース生まれ)

ヒストリー

お嬢様の少女時代

父親ロバートは医者、母親ハンナは元ダンサー。ブッシュ家は裕福な家庭に属し、その長女ケイトはそうした環境の中育っていきます。1968年頃から音楽に興味を示しだし、ピアノを習う一方、自らも詞を書き始めます。

1974年、音楽の道に本格的に進むことを決意したケイト・ブッシュは、学校を中退し音楽に専念します。兄の伝(つて)でピンク・フロイドのデイブ・ギルモアを自宅に招待し、彼女の曲を直接聞かせ、結果デイブ・ギルモアが彼女の才能に魅せられました。ケイト・ブッシュ16歳のときでした。

天才少女としてのデビュー

3年間の準備期間を経て、1977年11月にエミリー・ブロンテの名作で映画としてもヒットした小説「嵐が丘」をモチーフにしたシングル"嵐が丘(Wuthering Heights)"でデビューします。これがいきなり全英4週連続一位を記録し、デビュー・アルバム「天使と小悪魔(Kick Inside)」も40万枚というセールスとなり、一躍ケイト・ブッシュは天才少女として大きな注目を集めることとなります。

その後も1978年に2ndアルバム「ライオンハート(Lionheart)」、1980年に3rdアルバム「魔物語(Never For Ever)」、1982年に「ドリーミング」、1985年に「愛のかたち(Hounds Of Love)」と作品を発表。その才能に関して惜しみない賞賛が贈られました。

突然の消息不明と復活

1993年に発表された童話「赤い靴」をモチーフにしたというアルバム「レッド・シューズ」以降、彼女の消息はぴたりとなくなります。一説によれば、以前より問題を抱えていた精神面の異常のため治療していたとか、母親業に忙しくて作品を制作できなかったとか言われています。精神面の噂については彼女の歌があまりにもエキセントリックであったから流れたものと思われます。後者の母親業については本人も述べているようにこれは事実のようです。

とにかく、前作から12年ぶりとなる2005年11月7日2枚組アルバム「Aerial(エアリアル)」が発表され、やきもきしていたファンを喜ばせました。


代表的なアルバム

天使と小悪魔 [The Kick Inside]

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透明感のあるガラスのような美しさが印象的だった天才少女ケイト・ブッシュのデビュー・アルバム。さんまの"恋のから騒ぎ"のオープニングを飾る「嵐が丘」が収録されています。この曲は、これはエミリー・ブロンテの「嵐が丘」にモチーフにしたドラマティックな曲で、死せるヒロインであるキャシーの亡霊が主人公ヒースクリフのもとに戻ってきて彼に呼びかけている、という設定になっています。

さすがに、3年間の準備期間をへてデビューしただけあってすでに完成された美しさと芸術性を併せ持った作品となっています。暗喩を多用した幻想的な歌詞、奇妙なメロディ・ラインなど、ロックと言うよりは戯曲のような趣があります。

鯨の啼き声から始まる1曲目といい、一度聴いたら薄い粘膜のように耳に張り付いて離れない、そんな不思議な歌声で、貴方を幻想の国へと連れて行ってくれます。

魔物語 [Never for Ever]

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衝撃的な一枚からさらに進化を遂げた2枚目。彼女の場合、タイトル自体からして色んな想像力をかきたててくれるのですが、エンディング・ソング「呼吸」など、"生きるとは呼吸すること" という自明のことを説明しているだけなのに、彼女が歌にするとそれが崇高なものに変わってしまうのは、さすがです。

また、このアルバムで印象的なのが「少年の口づけ」です。この曲は一人の女性が少年にキスをすることで、性的に疼きをおぼえ、次第にみだらな気持ちが押さえきれなくなり、とうとう少年を導き入れてしまう、という内容なのですが、彼女が歌うことでよりエロティックに感じてしまいます。

ドリーミング [The Dreaming]

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前作が『魔物語』というタイトルでしたが、どちらかと言うとこちらのほうが "魔物語" 的です。彼女の作品の中でも最もいっちゃっています。ジャケット自体も手首に鎖をつけ、発狂してしまったような表情になっていますし.... くれぐれもこれを一枚目として聞かないほうがいいと思います。後の作品が聞けなくなりますので。

また、この作品については本人もインタビューで、

この作品を作ったことにより私自身変人と思われたりした。その結果、低俗なテレビを見るようになったり、消耗して休息が必要になったりもした

といった内容の回答をしているように、彼女自身もこの作品はやりすぎたと思っているようです。ただケイト・ブッシュのコアなファンにとは最高傑作かもしれませんが。

個人的な意見ですが、このアルバムは夜中に聞かないほうがいいかもしれません。特に最後の「狂気の家」を夜中の2時あたりに聞いた日には、朝日が窓を照らすまで部屋の電気を消せなくなっていますすのでご用心を。はっきり言って、とても怖いです。

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