ザ・クラッシュ [The Clash]

社会の代弁者とロックスター

同じパンクとして有名なセックス・ピストルズを筆頭にして、パンクとは音楽ではなく、その破滅的なスタイルであったといえるでしょう。一方、他のパンク・バンドを尻目に、論理的にパンクを考えたのがこのクラッシュと言えます。

それらはサウンド的にもその違いを明確にしました。他のバンドが3コードのシンプルな構成のロックンロールをベースに、刹那的な歌を創っていったのに対し、クラッシュはロックだけでなく、レゲエ、ファンク、R&B、ロカビリー、カリプソ、ダブにいたるまで幅広く取り入れ、その表現の仕方にこだわっていました。また、他のバンドとは違い、ハスキー・ボイスで吼えるように歌うジョー・ストラマーと、パンクとは思えないほどクリーン・ボイスで歌うミック・ジョーンズ。この二人の看板ボーカルというのも異質な存在でした。

その結果、彼らはデビューから約10年という長い月日にわたって活躍することになります。それは、他のパンク・バンドが結成されてはすぐに消えていくなか、一時的な社会的な怒りだけでなく音楽としてパンクを考えていた彼らであったからこそ成し得たことでしょう。

アーティスト

ジョー・ストラマー(ボーカル、ギター)
ミック・ジョーンズ(ボーカル、ギター)
ポール・シムノン(ベース・ギター)
テリー・チムス(ドラム)

ヒストリー

パンクのシンボル

クラッシュは1976年、ロンドンで結成され、翌77年「白い暴動」でデビューしました。このアルバム自体はサウンドとしてもパンク・ロックの路線を周到していたため、その当時人気のあったセックス・ピストルズと並んで、一気にパンクのシンボルとなります。

社会に対して戦う姿勢

他のパンク・バンドがスタイルとしてのパンクであったのに対し、彼らはそこから脱却し、社会に対して戦う姿勢を持ったバンドへと成長していきます。具体的に言うと、前者が社会に対する怒りを歌にしただけであったのに対し、後者であるクラッシュは実際に行動を起こしたということです。

レゲエへの傾倒と社会の変革

ロンドンでは英連邦に所属した地域のマイノリティが貧困の中に生活しており、ジャマイカからの移民もマイノリティの一つとしてロンドン市内にコミュニティを形成していました。不況、失業、社会の不平等を音楽を通じて表現していたクラッシュは、日曜ごとに集まるカリブ系移民のコミュニティに呼応し、しばしば活動をともにします。この活動を通じて彼らの音楽であるレゲエを知るようになり、結果としてレゲエへと傾倒していくことになります。

このように、労働組合活動や学生運動などと同様民族的に少数派の活動は権力者からの弾圧を受けることがあり、このような場に弱者の側にたった活動をしたことがクラッシュを国家と対立させることとなりました。

そして崩壊へ

しかし、度重なるメンバーの交代とジョー・ストラマ-とミック・ジョーンズの考え方の違いがバンドを崩壊へと導きます。社会の代弁者であろうとしたジョー・ストラマ-に対し、ロック・スターを目指したミック・ジョーンズ。この中心人物二人の対立がバンドを崩壊させました。その後、それぞれは個々に活動をしていくことになりますが、2002年12月22日サマセット州ブルームフィールドにある自宅で、クラッシュそのものであったジョー・ストラマーが心臓発作で死去しました。


代表的なアルバム

白い暴動 [The Clash]

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1977年のデビュー・アルバムです。知人であるツアー・エンジニアをプロデューサーにしてしまったせいか、チープでカリカリの音質に仕上がっています。ただ、それがかえってパンクらしく生々しい音になっています。音楽的にはポップでメロディアスな仕上がりになっていますが、現体制や人種問題など社会の抱える矛盾への力強いメッセージがアルバム全編を貫いており、真っ直ぐなロックンロールでストレートに訴えかけてきます。

その刺激的な内容のためか、各方面で物議を呼び起こした問題作でもありましたが、それゆえあらゆるパンクスから熱狂的な支持を得るようになったのも事実です。シャウトするジョー・ストラマ-、澄んだ声のミック・ジョーンズといった正反対のボーカルも今までのパンクとは一味違っており、魅力の一つでもありました。

ロンドン・コーリング [London Calling]

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1979年発売の3rdアルバム。ジャケットの色使いといい、ジャケット写真といい、これぞパンクっていう感じのアルバムです。中身もスタイル中心だったセックス・ピストルズと違って音楽的にもアーティストといえる作品群が並んでいます。また、彼ら自体「パンクはスタイルじゃない、考え方(姿勢)だ」と言っていることからも、「パンクとは何か」をいつも考えていたバンドだったといえます。

いわゆるパンクを想像している人にとっては、このアルバムを聴くとちょっと拍子抜けしてしまうかもしれません。歌詞的には政治的なことを歌ったりリスナーを煽ったりしていますが、音楽的には単純なコードに投げやりな演奏、という他のパンク・バンドに見られるスタイルではなく、レゲエ、ラップなど違うジャンルの要素を取り入れたところを見せるなど、すでにパンクという枠を超えています。実際、米「ローリング・ストーン」誌に「80年代で最も重要なアルバム」と称えられたほどであり、高い音楽性をもった作品に仕上がっています。

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