イーグルス [The Eagles]

ウェストコーストロックの黄昏

デビュー当初は、カントリー・ロックのイメージが強く、バーニー・レドンが演奏するバンジョー、ペダル・スティール・ギター、マンドリンが、バンドのサウンドを決定づけていました。ただし、ファースト・アルバムから既に"Witchy Woman"、"Tryin"といったハードロック的要素をもった楽曲があるなど、単なるカントリー・ロック・バンドではありませんでした。

サウンド面で終始一貫していたのは、分厚いコーラス・ワークです。サウンドがどれだけハードになっても、リード・ボーカルにプラスして3声以上のコーラスをほぼ全曲で聞く事ができます。これは全員が優れたシンガーであり、全員がリード・ボーカリストでもあったイーグルスの最大の特徴と言えるでしょう。

バンドのイニシアティブは、ファースト・アルバムこそ、全員平等に曲を持ち寄り、均等にリード・ボーカルもとっていますが、2枚目以降、フライ=ヘンリーの二人による支配が強まり、シングル曲のほとんどは、この二人どちらかがボーカルをとっています。

アーティスト

Glenn Frey(vo, cho, g, key) 1948.11.6生
Don Henley(vo, cho, ds) 1947.7.22生
Bernie Leadon(vo, cho, g, banjo) 1947.7.19生
Randy Meisner(vo, cho, b) 1946.3.8生
Don Felder(g, cho) 1947.9.21生
Joe Walsh(vo, cho, g, key) 1947.11.20生
Timothy B. Schmit (vo, cho, b) 1947.10.30生

ヒストリー

60年代の終焉と失われた時代

1972年に、デビューしたイーグルスは、それまでのウェスト・コースト・サウンドの泥臭さを徐々に排除し、さわやかな作風を模索していきます。彼らがデビューしたとき、すでに60年代の熱き時代は終焉しており、ロック音楽は死んだと言われていました。その中で、"歌" を歌うための題材を捜し求める旅がイーグルスの歴史そのものだったのです。

カントリー・ロックからの脱却への道

まず、最初に挙げられるのは2枚目の『ならず者』です。この作品は、ファーストとメンバーの変更もなく基本的には同じ路線のサウンドとなりましたが、やはりバーニー・レドン色が強いブルー・グラス的な楽曲と、ハード・ロック曲が共存しています。

3枚目の『オン・ザ・ボーダー』では、2曲を録音したところで、プロデューサーがハードロック的色彩の強いビル・シムジク(Bill Szymczyk)に替わり、また、フロリダ出身のギタリスト、ドン・フェルダーが加わり、ロック色を強めていきます。

続く4枚目の『呪われた夜』では、まだカントリー色の濃い楽曲もありますが、リードギタリストが完全にドン・フェルダーに替り、実際、1975年12月にはレドンが脱退してしまいます。同じ12月、レドンに替わるメンバーとして、元ジェイムズ・ギャング(James Gang)のジョー・ウォルシュが加入。一気に、ハードロック色を強めていきます。

60年代への決別とロック音楽最後の輝き

その翌年に発表された『ホテル・カリフォルニア』。このアルバムにおいてカントリー・ロック的な楽曲はついに無くなります。このアルバムの代表曲「ホテル・カリフォルニア(1976年)」は、当時のロック音楽産業含めたアメリカ社会を揶揄した深みのある歌詞と、オカリナと13本のギターを重ねた哀愁漂うサウンドで、1970年代のアメリカンロックを代表する一曲となりました。この曲において、60年代の幻想に人々は別れを告げることになります。産業主義を批判しながらも、それにあわせていくしかなかった悲しみのようなものが凝縮されたこのヒット曲には、斜陽を迎えたロック音楽最後の輝きを垣間見ることが出来ます。

産業主義への迎合と解散

そして、ラスト・アルバムである『ロング・ラン』では更にギターバンド色が強まり、アレンジの中心は完全にオーバードライブの掛けられたギターサウンドになりました。このアルバムからは、「ハートエイク・トゥナイト」「ロング・ラン」「言いだせなくて」がヒットしますが、それでも1982年5月正式にイーグルスは解散してしまいます。『呪われた夜』以上の作品を創ることが出来たにもかかわらず、産業主義に迎合してしまったという気持ちのわだかまりが、メンバー間の亀裂を生み、修復不可能なところまでいってしまった結果でした。


代表的なアルバム

呪われた夜 [One of These Nights]

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初の全米NO.1アルバム。前作「オン・ザ・ボーダー」からの流れを推し進め、ロック色が濃く カントリー的な要素が薄らいだ作品です。全米1位を獲得したロック・ナンバー「呪われた夜」のほか、「いつわりの瞳」、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」などドラマティックなナンバーを収録しています。

また、このアルバムを最後にもともと中心メンバーであったバーニー・リードンは脱退します。彼はカントリー的なフレーズが得意なギタリストでしたが、バンドの音楽が、カントリー・ロック的スタイルからハード・ロック的なスタイルに移行していく流れの中で、彼の居場所はなくなっていったからでした。

泥臭さのあったイーグルスはこのアルバムを境に洗練されたウェストコースト・サウンドへと傾倒していきました。歌詞自体も内省的になっていき、自分たちの進むべき道(=60年代の進むべき道)を模索することになります。その模索した先の答えが次回作『ホテル・カリフォルニア』で悲しい結末を迎えます。

ロング・ラン [The Long Run]

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まずこの黒いジャケットです。シャドーがはいった銀の文字が一見おしゃれに見えますが、だんだんと暗いといった印象に変わってきます。『ホテル・カルフォル二ア』において事実上バンドとしての存在意義が途絶えてしまったイーグルスにとって、このラスト・アルバムは黄昏の後の暗闇の中に浮かぶ雲隠れの銀の月、のようなアルバムだったのかもしれません。

このアルバムの音楽的な特徴として挙げられるのは、過去の音楽への憧憬といったところではないでしょうか。過去の音楽を現代風にアレンジしたような楽曲は、退廃的な世の中をシニカルに見つめる歌詞が特徴的で、ある意味それに踊らされている自分たちをあざ笑うかのようでもありました。

しかしながら、音楽的には最も洗練され、「言いだせなくて」「ハートエイク・トゥナイト」などのヒット曲はでました。ただ、"長く走りつづけたが、結局はスタート地点からも一歩も進んでいなかった" と歌うタイトル・ナンバー「ロング・ラン」やイーグルスやジャクソン・ブラウン、J・D・サウザーたちが将来の夢を語り合った酒場への思いを綴った「サッド・カフェ」こそがこのアルバムそのものであり、イーグルスのメンバーの素直な気持ちの現れだったと思います。

ホテル・カリフォルニア [Hotel California]

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前々作『呪われた夜』で内なる旅へと旅立ったイーグルスがたどり着いた旅の終着駅『ホテル・カリフォルニア』。アメリカ合衆国の軌跡への疑問符として製作された本作品は、そのアルバム・ジャケットが象徴しているとおり "黄金の黄昏" を表現したアルバムです。

このアルバムのタイトル曲「ホテル・カルフォルにア」は、砂漠を旅する主人公が、旅の途中でふとあるホテルに立ち寄ることから始まります。そこの生活は豪華で退廃的でした。その主人公はその魅力的でな生活から抜けられなくなります。日々が一日一日と過ぎていくうちに、彼はこのホテルには出口がないことに気づきます。逃げ口を探す主人公に向かってベル・ボーイは通告します。 "ここからチェック・アウトはできても逃れることは出来ません"、と。

この曲は、アメリカ合衆国の退廃や虚栄心、傲慢といった現状を表現したものと言われています。西へ西へとフロンティ・スピリットという名のもとに、ネイティブ・アメリカから略奪し、殺戮してきたアメリカが "カリフォルニア" という西の果てに辿り着いたとき、その見続けた夢が何であったのかを問いかけています。そして、それは60代の幻想が壊れ音楽がビッグ・ビジネスになってしまい、その渦の中で行き場を失った自分たちについての問いかけでもあったのです。

その思いは、"成功してもそれは永遠でなく、僕らだっていつかは忘れられてしまう" と歌った「ニュー・キッド・イン・タウン」、金持ちの不幸な人生について綴った「駆け足の人生」に続き、西へ西へと進みつづけた先の黄金の黄昏「ラスト・リゾート」でこの物語は終わります。

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