労働者階級のヒーロー
アメリカを代表するロックン・ローラーと言えるでしょう。労働者階級の立場にたった歌詞と頑強な見た目で「ボス(Boss)」というニック・ネームで呼ばれています。初期の作品においては、ティーン・エイジャーの苦悩や怒りといったものの描写に際立った才能を示しましたが、やがて社会的なテーマを作品に織り込むことによって、アメリカ民衆、特に労働者階級や若者の声を代弁者へと成長していきました。
音楽的にはアメリカン・ロックの王道そのものです。音楽的にはそれほど特徴と言ったものはありません。しかし、彼の叫ぶような歌い方やその声量は有名で、初めてライブを見た人はその圧倒的な声の壁に驚くことと思います(ライブに行ったことのある人はこの表現がよく判ると思います)。
また、彼のステージはいつもTシャツとジーンズというのが定番となっています。これはデビュー当時より首尾一貫とした彼のポリシーであり、そのチープな衣装が労働者階級に受け入れられ、共感を呼ぶ理由にもなっています。しかし、いまや大金持ちとなったブルース・スプリングスティーン。普段はアルマーニのスーツをこよなく愛するダンディとのこと。
労働者側に立ち主張していたはずなのにその主張が彼を成功させ、結果として自分が大金持ちになってしまう。
ちょっと悲しい事実ですが、これがショー・ビジネスの現実であり、現代社会の矛盾であり、仕方のないことかもしれません。
アーティスト
ヒストリー
デビューまでの道のり
エルヴィス・プレスリーに憧れてギターを始めたブルース・スプリングスティーンは、10代半ばから地元ニュージャージーで数々のアマチュア・バンドに参加し、そのキャリアをスタートさせました。そして、1971年リズム・アンド・ブルースの要素を取り入れたブルース・スプリングスティーン・バンドというグループを結成。デビューするもののバンドには仕事をえることが出来ず、解散してしまいます。
ソロとして活動を始めたブルース・スプリングスティーンでしたが、1972年に若手音楽ビジネス家のマイク・アペルと出会い、才能を見込まれることとなります。そして、1973年1月に念願の『アズベリーパークからの挨拶(Greetings From Asubry Park, N.J.)』でレコードデビューをしました。
イメージと現実
デビュー当初は『第二のディラン』というキャッチ・フレーズで、シンガーソングライター的な扱いを受けました。しかし、ブルース・スプリングスティーンはロックン・ローラーとしての活動にこだわっていたため、そのギャップに苦しむことになります。
1973年11月にセカンド・アルバム『青春の叫び(The Wild, The Innocent & The E Street Shffule)』を発表。このアルバムは評論家からも評価を得る(1974年にライヴを観たロック評論家ジョン・ランドーに「ロックン・ロールの未来」と絶賛される)一方、ライブも評判を呼び、ブルース・スプリングスティーンの名は少しずつ世に知れ渡っていきました。
もう誰も止められない
そして、ブルース・スプリングスティーンがブレイクするときがとうとうやってきます。1975年のサード・アルバム『明日なき暴走(Born To Run)』は発売1週間後に全米チャートトップ10に入り、10月18日付けチャートで3位となるヒットとなったのです。このアルバムは社会的にもかなりの影響を与えました。"タイム誌とニューズウィーク誌というアメリカの2大総合情報誌の表紙を同時に飾る"という結果からもそれは明らかなことでした。
その後、マネージャーのマイク・アペルとトラブルになり、1976年に裁判となったりするものの、1978年にアルバム『闇に吠える街(Darkness On The Edge Of Town)』を発表。その後のライブの主要レパートリーになる曲が収録されたアルバムとなりました。
労働者階級のヒーローからスーパー・スターへ
1980年、5枚目のアルバム『ザ・リバー(The River)』を発表。このアルバムをもってブルース・スプリングスティーンは初の全米No1を獲得します。
そして、1984年、7枚目のアルバムである『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』を発表します。このアルバムは全米で1,200万枚、全世界で2,000万枚の売上を記録するという大ヒット・アルバムになりました。
静かな時代
1990年代になると、80年代ほどの勢いはなくなりますが、随所で印象的な出来事が起こります。
1993年には、ジョナサン・デミ監督の映画『フィラデルフィア(Philadelphia)』の主題歌として「ストリーツ・オブ・フィラデルフィア(Streets Of Philadelphia)」を書き下ろしで提供。同曲で1994年にアカデミー主題歌賞を受賞しています。
1995年にはジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』にヒントを得たアルバム『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード(The Ghost Of Tom Joad)』を発表し、1997年まで、アコースティック・ソロでワールド・ツアーを行ったりしています。
もう一度原点へ
2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件は、スプリングスティーンの活動にも大きな影響を及ぼすこととなりました。翌2002年7月に発表したアルバム『ザ・ライジング(The Rising)』はテロの犠牲者や遺族、自爆テロリストにまで題材をとり、事件の傷跡を癒そうとする内容の作品となっています。
またイラク戦争反対を訴え、2004年のアメリカ大統領選挙に際しては、反ブッシュ的立場を鮮明にしました。その活動は『Vote For Change』と名づけられ、R.E.M.、パール・ジャム、ジャクソン・ブラウン、ジョン・フォガティら多数のアーティストとツアーを行い、共和党支持の強い地域で民主党支持を訴えました。
そして、2005年4月、通算20作目となるアルバム『デビルズ・アンド・ダスト(Devils & Dust)』が発表されました。主に、個人の信条と政治や社会の間で苦悩する人々の姿が描かれている作品であり、ブルース・スプリングスティーンがもう一度原点に戻った作品となっています。
代表的なアルバム
明日なき暴走 [Born To Run]
ソニーレコード (1999-08-21)
売り上げランキング: 54030

躍動するロックの輝き
青春の1枚
ロックンロールの未来であり今
ロックンロールの未来であり今
「俺たちのような根無し草は走るために生まれてきた」【曲目リスト】
- 涙のサンダーロード
- 凍てついた十番街
- 夜に叫ぶ
- 裏通り
- 明日なき暴走
- 彼女でなけりゃ
- ミーティング・アクロス・ザ・リバー
- ジャングルランド
【ライナーノート】
当時ローリング・ストーン誌のライターだったJon Landauによって「私はロックン・ロールの未来を見た」とまで評された本作。この言葉はこのアルバムの代名詞のようにつかわれました。聴くものを今すぐ行動をおこすべく駆り立てるその躍動感は、新たなるロック・ヒーローの出現として捕らえられたからです。
このアルバムのメインはやはり「明日なき暴走」ですね。まあ、これは誰もが認めることでしょう。でもそうしてこんなタイトルがつけられたのでしょう? 日常に絶望を感じながらも明日を求めて手を伸ばしている姿は、"明日なき" というよりは "明日への" といったポジティブな意味だと思うのです。ブルース・スプリングスティーンもそういう意味で「Born to Run」とつけたと思うのですが、皆さんはどう思いますか? 聴いた方、またこれから聴く方、ちょっと気にして聴いてみてください。
「明日なき暴走」があまりにも有名な中、管理人オススメは「涙のサンダーロード」です。ハーモニカとピアノで静かに始まる本曲は、次第に激しさを増していきます。この徐々に盛り上がるだけでも鳥肌が立つほどドラマティックなのですが、テンションがどんどん上がり緊張感が頂点に達すると、サックスの希望に満ちた雄大なメロディとともに(まるでダムの水があふれ出るように)一気にその緊張感がほぐれていきます。その緊張感の頂点でブルース・スプリングスティーンは「俺は勝つためにここを出て行くんだ!」とシャウトするのです。さびれた街で育ち、敗北者となっていくことを恐れたティーン・エイジャーが朝方の雷のなか、この街を出て行く。そう、人生の勝者となるために....
この曲を始めて聴いたとき、というよりこのフレーズを聴いたとき、どの時代にもある"青春と旅立ち"といった青臭い思いを真正面から投げかけられ、目をそむけることも出来ませんでした。その圧倒的な存在感の前で、素直な少年に戻ってしまった自分自身。一気に込み上げる思いとともに涙が止まらなかったのを今も覚えています。
ボーン・イン・ザ・U.S.A. [Born In The U.S.A.]
ソニーレコード (1995-11-22)
売り上げランキング: 19159

ボスのロックサイドの頂点。80年代を代表する1枚。
レコードにすることの難しさ
初めて買った洋楽アルバム
本当のアメリカ
アーメリカ 生まれさー!【曲目リスト】
- ボーン・イン・ザ・U. S. A.
- カヴァー・ミー
- ダーリントン・カウンティ
- ワーキング・オン・ザ・ハイウェイ
- ダウンバウンド・トレイン
- アイム・オン・ファイア
- ノー・サレンダー
- ボビー・ジーン
- アイム・ゴーイン・ダウン
- グローリィ・デイズ
- ダンシン・イン・ザ・ダーク
- マイ・ホームタウン
【ライナーノート】
このアルバムが発表された頃、レーガン政権下アメリカ自体が鷹派となっていた時代でした。映画界でもシルベスター・スターローンの「ランボー」やトム・クルーズの「トップ・ガン」といった映画がヒットしていました。このような時代背景の中発表された本作は、ブルース・スプリングスティーンのボスとしてのイメージと相まって国粋主義的なアルバムという評価をされてしまいます。
それを端的に表しているのが、このアルバムのトップ・ナンバーと言えるでしょう。
彼らは俺の手にライフルを握らせ、黄色人種を殺すために俺を外国へ送り込んだ。だって俺はアメリカに生まれたんだから
と歌った「ボーン・イン・ザ・USA」は、内容的にはそのように取られかねないかもしれません。もともとレーガン大統領が選挙運動の演説の際にこの曲を流したことがこのように彼をイメージさせることになった発端だったのですが、彼自身この曲にこめたのは国粋主義に対するアンチテーゼだったようです。ただ時代的には圧倒的にレーガン寄りであり、彼自身声高にそのことを訴えることが出来なかったと言うのが事実ではないでしょうか。
これはアルバム・ジャケットからも伺えます。星条旗を連想させるバックに、ジーンズを履いた後ろ向きのブルースの尻が写っています。これは、ジーンズ=自由 と 後ろ向きで尻を向ける=アメリカの現状に尻を向ける といった意味があるような気がします。
このように、サウンド的には非常にポップで聴きやすく大ヒットしたアルバムですが、内容的にはかなりシビアであり問題提起をした作品です。ぜひ歌詞カードを手にして、歌の内容も気にして聴いてほしいと思います。
ザ・リバー [The River]
ソニーレコード (1999-08-21)
売り上げランキング: 59117

2005年紙ジャケット盤とのちがい
15年ぶりに聴いて驚いた
the price you pay
Bossの最高傑作
ものすごいテンション!最高のアルバム。【曲目リスト】
[Desc1]- タイズ・ザット・バインド
- 愛しのシェリー
- ジャクソン刑務所
- 二つの鼓動
- 独立の日
- ハングリー・ハート
- 表通りにとびだして
- クラッシュ・オン・ユー
- ユー・キャン・ルック
- アイ・ウォナ・マリー・ユー
- アザ・リバー
- ポイント・ブランク
- キャディラック・ランチ
- アイム・ア・ロッカー
- 消え行く男
- 盗んだ車
- 恋のラムロッド・ロック
- ザ・プライス・ユー・ペイ
- ドライブ・オール・ナイト
- 雨のハイウェイ
【ライナーノート】
Eストリート・バンドとの息のあったテイクが生々しい80年発表の一枚。まるでスタジオでライブをやっているかのような躍動感を感じます。
このアルバムは労働者階級の苦悩や悲しみを描いたものとなっています。1曲目の「タイズ・ザット・バインド」からラストの「雨のハイウェイ」までさまざまなドラマが描かれていきます。
特に「ハングリー・ハート」。"金を貯め、家族にも恵まれ、何不自由ない生活を送っているのに、満たされない気持ち(=ハングリー・ハート)が誰にでもある"。そう歌うこの曲。主人公は最後は愛するものすべてを捨て家を出て行きます。その主人公はどこに行くのでしょう? その結果、心は満たされたのでしょうか?
そして、「ザ・リバー」。このアルバムのタイトル・ナンバーでもある本曲は、哀愁漂うハーモニカのイントロで始まります。主人公が自分の生い立ちを語ることから始まるこの曲は11分という長さ、淡淡とした曲調ながら、ドラマチックな歌詞の内容で聴くものを引き込んでいきます。若くして結婚し、生活に疲れた男女の姿を川に例えて歌った歌詞(「今夜あの川へ車を走らせよう/川はもう干上がっていると知ってはいるが」)が悲しすぎます。
その他にも、盗んだ車で夜の闇の中を当て所なくさ迷う男の心情を描いた「盗んだ車」など、実際には明るいノリの曲もあるものの、悲しい心情を描いた曲が多いためか、全体的に行き場のない悲しみがこのアルバムを覆っている印象があります。






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